「イザ! 新天地、新潟へ。」少年ムサシものがたり vol.8

「イザ! 新天地、新潟へ。」少年ムサシものがたり vol.8

 

立志編 5

 

 クラブの移籍と高校生活。少年とお母さんは上越新幹線で新天地新潟を目指していた。希望と不安を抱えての引っ越しである。

 

 新潟では寮生活。親離れでもあるし、子離れでもある。寮の身支度を調え、関係者へのあいさつを済ませ、お母さんは一人東京へ向かった。その新幹線の中での心境は察することができた。窓に映る涙は少年への期待より、心配の表れだろう。

 

 新天地移籍後2日目に少年から電話が入った。

 「また病気か?」

 と心配する自分とは裏腹に少年の声は踊っていた。

 「練習厳し過ぎてヤバイです」

 厳しいのがうれしいらしい。懲りないヤツだ。

 

 新潟は歴史が浅い。実績は皆無の状態だ。しかし、そんなことは少年には関係ない。体調面も戻り、今までの不調がウソのように動ける。 サッカーができる楽しさ。この当たり前から少し遠ざかっていた。何でもない練習が幸せそのものだった。 身体さえ動けば、怖いモノはない。それは少年の過去の実績を見れば疑いはない。

 

 技術は日本有数。その実力を証明するのに時間はかからなかった。

 すぐさまトップの試合に出場する機会が与えられる。名前は知らなくともそのプレーを目にすれば誰もが覚えてしまう。「あいつかあ~」。目の肥えた関係者の間にそんな声が試合ごとにあふれる。

 

 1年からトップチームで揉まれ、結果を出し続けて秋田国体少年男子にも選出された。

 国体1回戦の対戦相手は千葉県選抜。運命を感じずにはいられない。 チーム力は天と地ほどの差がある。案の定、一方的に攻め込まれる。あっという間に5対0。いいところもなく、一人ではどうしようもない。

 

 残り時間もあとわずか…。少年の足もとにボールが来た。いつもであれば、ゲームを組み立てゴールをねらう筋書き。しかし、このときは違った。少年はゴールしか見ていない。強引なドリブル。そして、シュート。ボールは千葉県選抜のゴールに吸い込まれていた。

 

 5対1。完敗だが、一矢報いることはできた。悔しさをチカラにできた瞬間だった。

 

続く

 



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